2025年以降 不動産市場に関すること
◆2025年問題
2025年問題とは、1947~1949年に生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで生じる社会問題のことです。総人口に対する比率が高い団塊の世代は、かねてより社会への影響が大きい存在として注目されてきました。
内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」によると、2025年の75歳以上の後期高齢者人口は2,180万人、65歳以上の前期高齢者人口は1,497万人に達することが予想されています。単純計算すると、約3人に1人が高齢者世代という超高齢化社会になるでしょう。
2025年問題では、さまざまなリスクが懸念されています。そのうちの1つとして挙げられるのが、労働者人口の減少です。多種多様な産業で人材不足が発生し、採用競争が激化すると考えられています。若手従業員が不足するだけでなく、高齢家族の介護を理由とした離職や労働時間の短縮によって、深刻な人材不足に陥る可能性があるでしょう。
また、中小企業等の後継者不足も問題視されています。中小企業や小規模事業者は、経営者自身の意欲や能力に依存している部分が大きいため、経営者が高齢化しているにも関わらず後継者が決まっていないケースも少なくありません。後継者不在の状態を放置していると、黒字でも廃業せざるを得ない中小企業等が続出し、雇用とGDPに膨大な損失が生じると言われています。
他には、社会保障費の増大も注意しておきたいポイントです。後期高齢者になると病気や怪我を患いやすくなり、若い世代と比べて介護費や医療費がかかります。高齢者が利用する介護費・医療費の社会保障は、現役世代の税金によってまかなわれるのが基本です。高齢化により労働人口が減る一方で社会保障費が膨らんでいけば、必要な財源が不足する事態が発生すると危惧されています。
◆空き家の増加
近年、高齢化による空き家数の増加が問題視されています。高齢者住宅・子どもの家への転居や死去など、空き家が増加している原因はさまざまです。
株式会社野村総合研究所の予測では、2033年までに空き家率が30.4%に上昇する見込みであるという結果が出ました。つまり、約3軒に1軒は空き家ということになるため、空き家問題は深刻性を増していると考えられます。
空き家の増加に伴い売却物件が増える一方、少子化によって物件の需要は減少しています。また、2021年に空き家対策措置法が一部改正されたことにより、今まで優遇処置対象となっていた空き家の固定資産税が6倍になる恐れも出てきました。
今後、多額の固定資産税を回避するために空き家の売却に踏み切るケースが増えると予想されており、供給過多が見込まれています。供給と需要のバランスが崩れた結果、不動産価格の下落に繋がるリスクが生じるでしょう。こうした状況から、2025年問題によって不動産市場全体の冷え込みが危惧されています。
◆不動産相続の増加
政府統計ポータルサイト「e-Stat」によると、「土地に関する登記の件数及び個数」において「相続その他一般承継による所有権の移転」は2012年で855,107件だったのに対し、2022年には1,136,561件でした。
登記とは、土地や建物の所在や所有者を明らかにするための帳簿であり、土地・建物を相続したら相続人が所有者として登記を行うのが一般的です。「相続その他一般承継による所有権の移転」は過去10年で増加傾向にあるため、今後も高齢化によって不動産相続が増えていく可能性が高いと考えられます。